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松永 武; 小林 健介
保健物理, 36(1), p.31 - 44, 2001/03
安定ヨウ素剤の投与は原子力施設の緊急時における初期防護対策の1つである。安定ヨウ素剤を投与した場合の甲状腺の内部被曝線量には、放射性ヨウ素の物理化学的性状に加えて、身体的因子が密接に関連すると考えられる。そこで、安定ヨウ素剤の日本人における投与効果を検討するために、日本の身体的因子を考慮したパラメータ感度解析を実施して次の点を明らかにした。その結果、放射性ヨウ素エアロゾルの呼吸器系ほの沈着割合に関しては、日本人パラメータとICRP新呼吸器系モデルの欧米標準人パラメータによる相異よりも放射性ヨウ素エアロゾル粒径への依存性が大きいことがわかった。甲状腺被曝線量回避率に関しては、血液中のヨウ素が甲状腺へ移行する速度を規定するパラメータの感度が高いことがわかった。以上の感度解析により、安定ヨウ素剤投与効果の変動範囲に影響の大きなパラメータを同定した。
松永 武; 小林 健介
Proceedings of 10th International Congress of the International Radiation Protection Association (IRPA-10) (CD-ROM), 10 Pages, 2000/05
安定ヨウ素剤の投与は、原子力施設の緊急時における甲状腺被曝の低減のための初期防護対策の1つである。安定ヨウ素剤を投与した条件下での放射性ヨウ素の吸入による甲状腺の内部被ばく線量に関係する種々のパラメータの感度解析を行った。日本人は、欧米人に比較して海草を多食することにより日常のヨウ素摂取が欧米人よりも多い。そこで、欧米人とは異なり得る日本人に対する安定ヨウ素剤の投与効果の大きさとその変動範囲の推定をICRPのヨウ素の代謝モデルと同等のモデルに基づいて行った。解析に用いた日本人における代謝パラメータは、1930年代以降の国内文献の広範な調査に基づいて推定した。解析の結果、日本人・欧米人の相違により生ずる、呼吸器系において放射性ヨウ素が捉えられる割合の差は数%以内と小さなことが明らかとなった。甲状腺被ばく回避率に関しては、血液内のヨウ素が甲状腺へ移行する速度を規定する代謝パラメータの感度が高いことがわかり、今後、この移行過程をさらに日本人について検討すべきことが明らかとなった。また、日本人の場合には回避率の大きいは欧米人に比較してやや小さなことが推定されるが、放射線ヨウ素の吸入による線量換算係数が日本人では欧米人に比較して小さいと考えられるために、甲状腺への放射線影響は日本人・欧米人であまり大きな差は生じないことが示唆される。